JR-60とは、1960年代初頭、トリオ(現在のKenwood)からアマチュア無線家向けに発売された、 デラックスな高一中二スーパー受信機です。 以前から機会があれば使ってみたいと考えていたところ、 運良く、手ごろな価格で入手することができました。
さて、この受信機は50年以上前のものですが、外観はさびや塗装のはく離が殆どなく非常に良い状態でした。 ケースからシャシーを引き出し内部を確認すると、シャシーの一部にさびが見られますが、 電解コンデンサのパンクもなく、3500KHzのマーカー用水晶も付属しており、一部AVC回路に改造が 施されていましたが、とても状態が良い物でした。
回路は、この通りです。クリックすると拡大します。(「電波実験アマチュア無線回路図集」より)
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早速、ほこりを拭き取り、真空管の汚れを落とし、ヒューズを確認した上で電源を入れてみることに。 ACプラグの根元が極端に曲がっているので、用心のためACプラグを新しい物に交換し電源をON。 スピーカーからは、何も聞こえません。 真空管のピンの電圧を測ってみることに。不良発見。出力管6AQ5のG1に+8V程度の電圧が出ています。 これでは、せっかくのカソードバイアスが効きません。 電圧増幅管6AQ8のPと6AQ5のG1間のカップリングコンデンサ(オイルコン)の不良に間違いありません。 手持ちの物と交換したところ、今度は、ものすごいブー音。AFボリュームを絞り きっても変化がありません。6AQ8を抜いても変わりません。平滑回路のコンデンサの容量抜けと見当をつけ、 手持ちのコンデンサを平滑回路のコンデンサに並列に接続してみると、ブー音はなくなりました。 その他、この時点で発見できた不具合と対処は以下の通りでした。
| 現象 | 原因 | 対処 | 
|---|---|---|
| 無音 6AQ5のG1に+8V  | 
カップリングコンデンサのリーク | オイルチューブラコン0.005uFを同等のセラミック0.005に交換 | 
| ブー音 ボリュームを絞りきっても変化なし  | 
平滑回路のコンデンサー容量抜け | 同等のブロックコンデンサーに交換 | 
| 音声出力が小さめ | 6AQ8のカソードのバイパスコンのリーク | 手持ちのケミコン33uFに交換 | 
| 音声出力が小さめ | 6AQ5のカソードのバイパスコンのリーク | 手持ちのケミコン33uFに交換 | 
| AFボリュームを絞っても音声が聞こえる | AFボリュームに残留抵抗あり | ボリューム500K(A)を100K(A)に交換(500K(A)が無かった) | 
音声回路がほぼ正常になったので、テストオシレーターの信号を入れIFTの調整を行いました。 Sメータでピークを取ろうとしましたが、メータの動きがふらふらしていてとれません。音声の出力を 頼りにピークを探すと、ピークの時に非常に歪みます。Sメータの動きが怪しい原因は分かりません。 もしかしたら改造してあるAVC回路が悪さをしていることも考えられます。改造された回路は、 IF信号を取り出しダイオードで倍電圧整流してAVC電圧を取り出しているようです。時定数も 別途コンデンサーを追加してあるようです。元の持ち主の改造を尊重して改造を活かすことも考えましたが、 改造の意図が分からないのでやむなく、オリジナルに戻しました。こうしたところ、Sメータの動きが 信号強度に追従するようになり、IFTの調整が楽になりました。調整を進めると、S-メータのピークに合わせると 音声出力に歪みが発生します。RFボリュームを少し絞ると歪みがなくなります。このRFボリュームは、RF増幅の 6BA6とIF増幅一段目の6BA6のカソードに直列に入っています。オシロスコープをIF増幅二段目の入力に つないで信号を確認したところ、歪みはIF増幅一段目の6BA6で発生しているのが確認できました。 一時しのぎですが、IF増幅一段目の6BA6のカソード抵抗を大きくして歪みを回避しました。
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